
「ネフェルティティ」その3
『River/ハービー・ハンコック』
ネフェルティティは「ムード」なのだ
マイルスの初録音から約40年後、作曲者ウェイン・ショーターが「ネフェルティティ」を録音!(実は90年代にショーターが参加した「マンハッタン・プロジェクト」というオールスター・バンドでファンクにアレンジされた録音もあるが、メロディを借りただけの、悪い意味での「特別企画」演奏なので除外)。土俵は、マイルス・バンドでともにオリジナルを演奏したハービー・ハンコックのアルバム。この『リヴァー』というアルバムはジョニ・ミッチェルにトリビュートしたもので、ジョニの楽曲が多くとり上げられているのだが、その中になぜか「ネフェルティティ」がある。
メンバーはショーター、ハンコックと、これまたデイヴ・ホランド、そしてドラムスのヴィニー・カリウタとギターのリオーネル・ルエケ。演奏はというと、ショーターとハンコックを中心に全員の同時進行ソロがじわじわ進んでいく。テーマのメロディが出たかと思うとソロへ、そしてまたテーマといった具合のかなり自然発生的でフリーな展開。しかし、テーマ・メロディが連続するマイルスのヴァージョンよりも、メロディの印象は「濃い」感じ。ああ「ネフェルティティ」はメロディではなく「ムード」を演奏する曲なのかな。謎はますます深まるばかりだ。
写真3:『River/ハービー・ハンコック』(Verve)