
「ネフェルティティ」その2
『The Song Of Singing/Chick Corea』
全部がアドリブ・ソロ
「アドリブ・ソロがない」ことで知られるマイルスの「ネフェルティティ」だが、マイルスはアルバム発表後の1969年のライヴでも演奏をしていて音源が残されている。メンバーはアルバムとは異なるが、フロントはマイルスとショーター。さすがにライヴではソロをとるだろうと思って聴くと、マイルスもショーターもソロがない(いや、最後にマイルスがソロを始めるんだけど、これはもう次の曲なのね)。やはりこれは「フロントはソロをとらない曲」なのだ。やっぱり謎だな。だが、ソロ・パートはあった。エレクトリック・ピアノのチック・コリアが延々と激しくやっている。
そのコリアが、マイルス・バンド脱退直後にベースのデイヴ・ホランドとドラムスのバリー・アルトシュルとのトリオでこの曲を録音している。ホランドはマイルス・バンドで一緒に演奏した仲間である。ソロはというと……ああ、全編ソロ。コリアのフリーなソロから始まり、基本はアップテンポの4ビートでバンドが疾走する。テーマのメロディは冒頭とソロ中の数個所、エンディングでほんの少し断片が出るだけ。演奏のきっかけというかサインのような扱い。でも聴き終わると「ネフェルティティ」だったという印象が強く残るのはどうしてなんだろう。1970年録音。
写真2:『The Song Of Singing/Chick Corea』(Solid State/Blue Note)