
「ココ」その2
『The Arrival/Michael Farquharson』
パーカーの即興はそれだけで「曲」なのだ
パーカーの「ココ」のアドリブ・ソロが歴史的名演として知られているのは、その勢いやスピードはもちろんだが、即興で生み出されたにもかかわらず、そのフレイズ、構成力が素晴らしいからである。そのままコピーして演奏できればそれだけでも意味があるといえるほど、魅力的なものだ(そりゃ難しいものでしょうけど)。で、それをなんとエレクトリック・ベースでやってしまった人がいる。マイケル・ファークハーソン(と読むのかな)というカナダ出身のミュージシャン。パーカーより遅い、ミディアム・スウィングのテンポだが、ドラムスとギターをバックにしてパーカーのソロ・フレイズを見事に弾いている。日本ではほとんど無名、つまりこの演奏もぜんぜん知られていないと思うが、そんな演奏でもインターネットがあれば探せるのだ。いろんな人がいるのだな。
パーカーの曲をエレクトリック・ベースで弾く、といえばジャコ・パストリアスが1976年のアルバムで「ドナ・リー」のテーマを弾いたのが有名だが、ジャコ以降は多くのベーシストがそれを取り上げたので珍しくなくなった、とうか必修科目になってしまったほどの感じだが、さすがにソロ・フレイズをコピーして弾くというのは珍しい。でも技術のアピールにはなったが、彼自身のアドリブ・ソロがないので逆にパーカーのひらめきやフレイズ、そして演奏がいかにすごかったのかを際立たせたという皮肉な結果になってしまった感もある。1997年作品。
写真2:『The Arrival/Michael Farquharson』(Jazz Inspiration)