
「ファンカレロ」その1
『The Bill Evans Album/ビル・エヴァンス』
エヴァンスのエレピもいいよね?
この「ファンカレロ」という曲はピアニスト、ビル・エヴァンス(1929〜80)の作曲。初めてアルバムに収録されたのは、自身の演奏による1971年録音発表の『ザ・ビル・エヴァンス・アルバム』。なにやらベスト・アルバムのようなタイトルだが、れっきとしたオリジナル・アルバムである。このタイトルになったのは理由がある。まず、レコード会社の移籍第1弾ということ。まあこれは売る側の問題でもあるけれど、どーんと存在感を出す事は必要だったのだと思う。内容もそんな考えからか、全曲を自身のオリジナル曲だけでまとめた。多くのスタンダード曲の演奏で知られるエヴァンスだが、実は名曲をたくさん書いてもいる。ただし全部が新曲というわけではなく再演も含まれているので、いわば「自演によるビル・エヴァンス名曲集」という趣だ。
そのアルバムの冒頭に収録されたのが、この「ファンカレロ」。当然、自信作でイチオシの曲だったと思われる。聴けばきっとそのとおりと思わせる、すばらしい演奏。リズミックなリフがとても印象的な名曲だ。聴きどころはさらにもうひとつある。エヴァンスはエレクトリック・ピアノも弾いている。このアルバム以前にも弾いてはいるが、アルバム1曲目いきなりエレピのイントロには驚いた人も多いと想像する。エヴァンスは結局気に入らなかったのか、数年間しかエレピを弾かなかったが、これはこれで実にいい感じだったと思うのだが…。「エヴァンスがエレピ?」と思った方はぜひどうぞ。
写真1:『The Bill Evans Album/ビル・エヴァンス』(Sony)