
「バード・オブ・パラダイス」その2
『バード・オブ・パラダイス/渡辺貞夫』
ビ・バッパーなら、いきなりアドリブだ
日本を代表するアルト・サックス・プレイヤー渡辺貞夫は、ジャズからフュージョン、ブラジル音楽まで、とにかく幅の広い人だけど、その根っこはビ・バップ。それを表明するかのように渡辺貞夫は時代に関係なく、多くのビ・バップ・アルバムを作っている。このアルバムはフュージョンで大人気を博していた77年の録音。アルトでビ・バップといえばもちろんチャーリー・パーカーが心の師匠(のはず)。これはグレイト・ジャズ・トリオをバックに従えたチャーリー・パーカー愛奏曲集で、「バード・オブ・パラダイス」はタイトル曲でオープニング。例のイントロの後、バリバリとアドリブを始めます。アルバムの主張がすべてここに凝縮されていると言える名演です。テーマのメロディはなくても、この曲の作曲クレジットはもちろんチャーリー・パーカー。パーカー派としては「オール・ザ・シングス~」じゃだめなんだな。ここで前項の続き。評伝などによると、パーカーは最初「オール・ザ・シングス~」を演奏したけど、プロデューサーからの指示でテーマを省いて演奏し直した。そしてこの「曲」をパーカーの作曲として発表。つまり「テーマ飛ばし」は著作権使用料を払わないための裏技だったというわけ(コード進行だけでは著作権保護の対象にならない)。さらに、同じコード進行にもかかわらず、誰かがこれを「バード・オブ・パラダイス」というタイトルで演奏すると、今度はパーカーに使用料が入るということになる。「オール・ザ・シングス~」を演奏する時は、テーマを省き「バード・オブ~」として演奏するのがパーカー信奉者の流儀(かも)。ちなみにパーカーはその後「バード・オブ~」、「オール・ザ・シングス~」ともに録音を残している。写真2:『バード・オブ・パラダイス/渡辺貞夫』(ビクターエンタテインメント)