
「バード・オブ・パラダイス」その3
『Intuition/ビル・エヴァンス』
「バード・オブ・パラダイス」ではないけど・・・
既製の有名曲のテーマ・メロディをすっ飛ばして、そのコード進行だけ借りてアドリブする(しかも自作曲として別タイトルをつけるという)「バード・オブ~」型の曲は他にもある(ちなみに既製曲のコード進行を借りて、新たな曲を作るのはもっと多い)。マスターが大好きなのが、「アー・ユー・オール・ザ・シングス」。このタイトルからわかるように、ネタもチャーリー・パーカーと同じです。「作曲」と演奏はビル.エヴァンス(ピアノ)。エディ・ゴメス(ベース)とのデュオです。エヴァンスは本家「オール・ザ・シングス~」もたくさんの演奏を残しているから、著作権うんぬんじゃない。想像するに、ここでの演奏はエヴァンスとしてはかなり異色のものになるので、他の「オール・ザ・シングス~」の演奏と並べられたくなく、あえて「バード・オブ~」型にしてみたのに違いない。コード進行は借りつつも原曲の甘めのイメージにはまったく引っ張られることなく、アドリブに全力を注入。イントロなし、いきなり突撃! すごい勢いで弾きまくっている。エヴァンス史上、単位時間あたりの音数がもっとも多いんじゃないかな。ひとつのフレーズ・パタンを執拗にくり返していったり、これが「リリカルな」エヴァンスかよ?って感じです。さらにこれエレピです。しかもエフェクトまでかかって音が左右に揺れまくってます。こんな異例なエヴァンス、知らない人も多いのでは? 最後は例のアウトロで終了。きっとこれがないと終われないんじゃないかという感じのぶっ飛ばしぐあい。テーマがないからこれはきっかけとして必要なのね。となればやっぱりあのイントロとアウトロが「バード・オブ・パラダイス」のテーマ・メロディと言うべきなのかな。1974年録音。写真3:『Intuition/ビル・エヴァンス』(Fantasy)